IPOにおけるショートレビューとは?重要性やレビューのポイントを解説【CPA'sVOICE】Vol.23

未上場の企業がIPOを目指す際に監査法人が行うショートレビューには、管理体制面を中心にIPOに向けての課題の洗い出しを行う目的があります。では、ショートレビューとは具体的にどのようなポイントを見ているのでしょうか?
今回は、IPOの流れやショートレビューのチェックポイントなどについてご紹介します。

IPOを目指す理由は?

そもそも、未上場の企業がIPOを目指すのには、どのような目的や理由があるのでしょうか?

企業としての信用度を高めるため

IPOを目指す大きな理由として企業としての信用度や信頼性を高めたいということが挙げられます。
上場することで、企業としての信用度が高まり、金融機関からの融資や取引先との取引口座の開設時に有利に働きやすくなるといったメリットが期待できます。
さらに、顧客からの信頼性も高まり、契約や売上に繋がることもあるでしょう。

もちろん、上場しなくても経営が成り立っている企業は多数存在しますが、起業や開業がしやすくなり企業形態が多様化している時代だからこそ、企業としての信用度を高めたいと考える企業も多いのです。

人材採用を有利に進めるため

深刻な人材不足が社会問題にもなっている昨今においては、人材採用を有利に進めたいという想いからIPOを目指す企業も増えています。
様々な形態の企業は増える中で、「上場企業」であることは、求職者にとって企業選びの安心材料になります。
優秀な人材の採用に繋げることを目的にIPOを目指す企業も少なくありません。

▼IPO監査と上場企業の監査の違いについてはコチラ
IPO監査って何をするの?公認会計士の役割は?【CPA'sVOICE】Vol.4

ショートレビューはIPO準備の第一関門


IPOを目指す際には、企業・監査法人・主幹事証券会社の三者間で、連携しながら準備を進めていきます。
会社は上場するには監査法人から2期間にわたり監査を受ける必要がありますが、監査法人は当該監査を受嘱するにあたっては事前にショートレビューを行うことが一般で、これにより、その会社の監査を行う上での支障がないかの確認を行います。その結果、管理体制に関する重大な課題や問題が発覚し、監査にすら進めないケースも少なくありません。
つまり、ショートレビューは、IPO準備を進めるうえでまず越えなければいけない第一関門なのです。
ショートレビューを受けた後に監査契約を行い、主幹事証券会社からの指導も受けながら会社を成長させ、かつ上場会社として恥ずかしくない管理体制の整備を進めていかなくてはなりません。このため、IPOの準備には3年、4年またはそれ以上の期間を要することも珍しくありません。

ショートレビューの結果IPOを断念するケースもある

当然のことながら、IPOの準備には、時間だけでなくコストもかかります。
コストをかけてでも、IPOを目指すことで企業にとってプラスに転じると確信できる企業であれば、IPOへ踏み切ることができますが、時には準備を進めている段階で上場を諦めるケースも珍しくありません。
中には、ショートレビューによって課題や克服ポイントが抽出された結果、「ハードルが高すぎて乗り越えられそうにない」と判断して上場を諦める場合もあります。

IPOの準備には3年以上もの時間を要するため、一時的な勢いだけでなく、3年以降も経営が上昇傾向を保っていけるかどうかを見極めながら進めることが重要なのです。

ショートレビューで見ているポイントは?

では、IPOにおけるショートレビューではどのようなポイントを重視しているのでしょうか?

まずは、いくつかの観点から企業の管理体制を調査します。
主に、ガバナンス体制、労務管理体制、予算実績管理など経営管理に関する管理体制、決算体制や会計方針の整備、固定資産の管理などの会計に関連する管理体制などについて、細かくチェックを行います。
さらに、法令面などの点でグレーなポイントがないかどうかも確認します。
例えば、会社が行うビジネスに法令違反の疑いがある様なグレーなビジネスがないかといった点や、役員や株主、取引先の中に反社会的勢力や反市場的勢力との関係が疑われる様なことがないかといった点を調査します。
その企業のインターネット上の口コミや風評、顧客とのトラブルといった情報を検索し、場合によっては外部の調査会社などにも依頼し、徹底的な調査を行うことも珍しくありません。

企業の成長を実感できるIPO監査

IPOを目指すためには、企業としての信頼性を高めなければいけません。
監査法人としては、公正・公平な立場で、職業的な懐疑心を発揮しながら監査を行い、少しでもグレーなポイントがあれば、徹底的に追及することが、社会から求められる役割となります。
一方で、徹底的に監査を実施することで、企業の公正性が証明されるとともに会社のレベルもアップし、ついには上場へと至った時には、喜びも大きくIPO監査ならではの醍醐味を感じられることでしょう。
自身が携わった企業が上場した際には、その企業がさらなる成長を遂げる可能性を秘めながら元気に活躍していく様子を間近で見ることが出来ることから、IPO監査はやりがいも大きいのです。

まとめ

IPOを目指すには、3年以上もの期間を要し、様々な課題をクリアしなければいけません。
その中で第一関門となるのが監査法人によるショートレビュー。
中にはショートレビューを受けて上場を断念するケースもあるほど、企業にとっては大きな壁のひとつです。
一方で、そうした壁を乗り越え、無事に上場へと進んだ時には、監査人としても大きな喜びややりがいが感じられるものです。
IPOにおけるショートレビューは、多くの企業をクリアな経営や成長へと導く第一歩でもあるのです。

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