公認会計士に必要な「文章力」【CPA'sVOICE】公認会計士のつぶやきVol.26
様々な場面で文章の作成が求められる公認会計士は、文章力が必要な仕事とも言われています。では、公認会計士に求められる文章力とはどのようなスキルなのでしょうか?今回は、公認会計士に必要な文章力や注意すべき表現、スキルを磨くコツなどをご紹介します。
公認会計士に文章力が必要な理由

公認会計士は、単に監査を行うだけが仕事ではありません。
監査を行うには、監査計画や実施内容、監査における発見事項や結論などを監査調書にまとめる必要があります。
監査調書は、監査業務を適切に行った履歴として重要な資料になるため、正確に分かりやすく書き記さなければいけません。
また、クライアントに対して業務改善レポートなどを提出する機会も多くあります。
業務改善レポートの読み手となるクライアントの多くは、監査に対する専門的な知識を持っていないため、誰もが理解できるような分かりやすい表現や内容が求められます。
ときには、書籍や解説記事などの執筆を依頼されるケースもあります。このように、公認会計士は一定の文章力が求められる仕事なのです。
どのような文章が求められるのか

では、公認会計士にはどのような文章力が求められるのでしょうか?
読み手に配慮した文章
文章を書く際には、読者への配慮が必要です。せっかく文章で多くのことを伝えようとしていても、読み手が理解できなければ意味がありません。
読み手の視点に立った文章を作るには、書いた文章から一度離れてから読み直すことも大切です。
例えば、出版物の執筆の場合は、書き終えてから1~2週間ほど一度離れてみてください。
頭をクリアな状態にして改めて読み直してみると、表現や内容のおかしな点が見えてくるものです。
読者はクリアな状態で出版物を読むため、読み手と同じ状態で読んだ時に疑問が生まれない文章になっていることが重要です。
理論構成が整った文章
文章を読みながら「何だか読みにくいな」と感じることはありませんか?
読みにくく感じる文章の多くは、理論構成が整理されていないまま書かれています。
そのため、文章を書く際には、文章構成を理論的に整理したうえで書き進めることが大切です。
理論構成がきちんと整っていれば、自ずと読みやすい文章が仕上がるものです。
専門用語や難しい言葉を噛み砕いた文章
公認会計士は、調書作成以外にも、クライアントに対する改善レポートの作成や会計記事の解説など様々な場面で文章を書くことがあります。
そうした改善レポートや解説の読み手となるクライアントや一般企業の経営陣は、必ずしも会計監査の専門知識を持っているとは限りません。
そのため、専門的な内容を難しいままで説明するのではなく、いかに分かりやすく説明するかが大切です。
専門用語はできる限り嚙み砕いた言い回しにし、必要に応じて注釈をつけるなど、監査の知識がない人であっても理解できるような表現が求められます。
文章を書く際に注意すべき表現

公認会計士の仕事における文章で大切なことは、事実関係を正確に書くことです。
自身の感想や個人的な判断など、明確な根拠のない内容では、監査の意義をなさなくなってしまいます。
また、事実を正確に記すためにも、曖昧で分かりにくい表現は避けるべきです。
ここでは、監査調書において避けるべき代表的なワードを紹介します。
注意表現1|必ずしも~とは言えない/~は否定できない
一見、違和感なく読み進めてしまいそうな表現ですが、これらは、否定も肯定もできないという曖昧な言い回しです。
事実をはっきりと断定できない表現は、監査調書には相応しくありません。
注意表現2|~とのこと
「~とのこと」は、筆者の言葉ではなく、誰かからの伝聞です。
つまり「~とのこと」だけでは、その内容の正確性が明確ではありません。
伝聞に対する裏付けや証拠などが記載されていれば問題ありませんが、伝聞だけでは説明が不十分なため避けるべき表現です。
文章力を磨くコツ

日々公認会計士の仕事に励んでいるだけでも、文章を書く機会が多く、文章力が強化されそうですが、さらにスキルを磨くにはどうしたら良いのでしょうか?
フィードバックを受ける
自分で書いた文章を自分で読んでばかりいても、簡単には文章力は向上しません。
文章力を磨くには、第三者による意見やフィードバックが何より効果的です。
上司や先輩、同僚などに文章を読んでもらうことで、自分では分からなかった癖や使いがちな表現などに気づくこともできるでしょう。
セミナーを開催する
文章力とは、言い換えれば、誰かに何かを伝える力です。
そのため、セミナーや講習会などで話し手となって伝える経験は、文章力の向上にも十分活かすことができます。
実際に、若手公認会計士に対してセミナーの講師を経験することを推奨しているケースも珍しくありません。
大多数に対して伝える経験は、あらゆるシーンでの文章力向上に効果的です。
まとめ

公認会計士は、調書やレポートの作成から書籍の執筆まで、文章を書く場面が多く、高い文章力が求められる仕事です。
また、専門的で難しい内容を分かりやすく説明する力や、事実を正確に伝える力など、様々なスキルが必要です。
作成した文書を第三者にフィードバックしてもらったり、セミナーや講習会を経験したりと、文章力を磨く手段は多くあります。そうした機会を数多く設けることで、公認会計士としてのスキル向上にも役立てることができます。