監査のリスクアプローチとは?【CPA'sVOICE】Vol.17

会計監査における手法のひとつであるリスクアプローチとは、企業やその業界の特性などを理解したうえで、リスクが高い、つまり財務諸表の虚偽表示が起きる可能性が高いと判断した項目を重点的に監査する手法のことです。今回は、リスクアプローチの目的や効果について解説します。

リスクアプローチとは

 

リスクアプローチとは、企業やその業界の特性などを理解したうえで、リスクが高い、つまり財務諸表の虚偽表示が起きる可能性が高いと判断した項目を重点的に監査する手法のことです。
的を絞ることで効率的に監査を進められるだけでなく、効果的な監査が期待できます。
ただし、重要度の高いリスクに的を絞るという特性上、重点を置くリスクを適切に評価することが求められます。
そのためにも、企業や組織ごとの事情や社風、その企業が属する業界の特性、さらに内部統制における弱点などを正しく理解しておく必要があります。
企業や業界ごとにリスクの可能性が異なるからこそ、様々な観点から可能性を洗い出し、重点を置くリスクを正しく判断することが大切です。

リスクアプローチの進め方は法人ごとに異なる

リスクアプローチによる監査は、重点を置くリスクを絞り込むことが大切ですが、どの程度までの絞り込みをするのか、そして認識したリスクに対してどの様な監査対応をとるのかといったスタンスは、監査法人ごとに微妙に異なるところもあります。

例えば、極端に絞ったリスクに対してかなり重点的に監査資源を投入して、リスクが低いと判断した項目に対してはさらっと流す法人もあれば、リスクをそこまで極端に絞り込みすぎず、比較的全般に監査資源を投入する監査を行う法人もあります。
そうした違いは、各法人がファームポリシーとして設定しています。例えばある母集団の中から何件かの実証手続きが必要といった場面で、どの様なサンプリング方法で何件を抽出するかといったサンプリング方針については、各法人がファームポリシーを設定していたりします。大手法人においては、このファームポリシーがより細かく、厳格に定められてます。

一方で、私の所属するあかり監査法人のような小規模の法人の多くは、法人としてのスタンスを決めつけすぎず、より監査の状況やクライアントの実態に即した方法を尊重しています。そうすることで、画一的な監査ではなく、クライアントの実態に適したより深度のある監査が可能となります。
ただし、監査品質を下げることなく、様々なアプローチの中でどの様な対応が監査リスクに対して最も効果的かつ効率的かということを判断していかなくてはならないため、その分、考える場面が多くなります。他の監査チームのやり方を見て、「なるほど!そんなアプローチの仕方もあるのか」と新たな視点を発見することも多いです。
画一的ではないということはその分、専門家としての判断要素の多い監査を実施することになるので高い監査の実務能力が求められますが、一方で監査の面白さを味わえる、小規模監査法人ならではの良さを感じることも多いです。

戦略に対する疑問を持つことも大切

 

リスクアプローチの進め方の中で、一定のサンプルを抜き出して監査を行うという方法があります。
例えば、商標をチェックする際に、どのようなルールや選別方法で、何件のサンプルを抜き出すのか、ということも法人ごとに異なります。

総件数のうち、上位100件をサンプルにする場合もあれば、ランダムに引き抜くこともありますが、少ないサンプルの中でいかに強い証拠力を得るかが重要です。
そのため、サンプルを引き抜く際の根拠が肝になります。

信憑性の高い根拠によって適切にサンプルを引き出す方法を判断するためにも、あらゆる観点から戦略を立てアプローチすることが大切です。

と言っても、こうした戦略を立てるには、やはり経験が求められるもの。
新人さんや公認会計士としての経験の浅い方は、戦略に沿って監査を進めていくことになるでしょう。
その際に、「どうしてこの戦略で進めることになったのか」「他にもっと良い方法はあるか」という疑問を持つことが大切。
与えられた戦略に疑問を持ち、納得したうえで監査を進めることで、リスクアプローチへの理解も深まり、着実に成長できるはずです。

まとめ

今回は、監査におけるリスクアプローチについて解説しました。
リスクアプローチは、効率的かつ効果的に監査を進めるうえで欠かせない手法のひとつです。
また、アプローチ方法や戦略の立て方は法人によって様々。
あらゆる観点や考え方があることを理解し、広い視野で適切な監査ができる公認会計士を目指してくださいね。

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