監査は誰のために行うの?【CPA'sVOICE】Vol.16

公認会計士を目指して勉強してきた方、あるいは今まさに勉強している方であれば、監査論の中で「監査の目的はクライアントのためではない」と学んだことがあるのではないでしょうか。では、一体会計監査とは誰のためのものなのでしょうか?今回は、監査が「クライアントのためではない」と言われる理由を解説します。監査が誰のために行われているのか、本当にクライアントのためのものではないのかどうかを紐解いていきます。

監査はクライアントのためのものではない

 

会計監査とは、クライアントである事業会社の透明性や正当性を証明することを目的に行われます。透明性や正当性を示すには不正や過ちがないことを証明しなければいけません。不正や過ちを是正するためには重箱の隅をつつくようなことも多く、クライアントにとってはほとんどのケースが耳の痛いことばかり…
表面的に見れば、監査はクライアントにとってありがたいものとは言えないでしょう。

こうした監査の特性から、「監査はクライアントのためのものではない」と言われているのです。

監査は株主や投資家のためのもの?

監査がクライアントのためのものでないのであれば、一体誰のために行うものなのでしょうか?

監査は、クライアントの不正や財務諸表の過ちを見つけ出し、会社の財務諸表の信頼性を担保し、会社に投資をしようとする投資家が安心して投資ができる環境を保全する役割を担っています。
しかし、それだけではありません。会社と監査を担当する公認会計士とが、会計処理やあるべき管理体制についての議論を行うことで、会社の管理体制が年々向上していくことが期待されます。つまり、会社にとっても直接的に利益があるとも言えます。

監査を受けることで、財務諸表の信頼性が担保され、投資家にとっての利益となります。さらに、会社の管理体制の強化という形でその会社の価値を向上させ、その会社の信頼性をさらに向上させることに繋がります。信頼性の向上した会社には、投資家等からの資金が流入し、会社のさらなる成長を支えることになります。まさに、循環的な社会的な価値向上に繋がるとも言えます。
監査は、単に会社のためとか投資家のためとかでなく、その会社を取り巻く社会の利益に資することに繋がるのです。
監査はその会社の短期的な利益のために行われるのではなく、長期的・持続的な成長のため、そしてその会社を取り巻く社会のために行われると言えます。

また、ほとんどの企業は、故意に不正を働こうとしているわけではなく、「不正のないクリアな経営」を目指しているはずです。それは、監査を受けて会社が作成する財務諸表の適性性が表明されることで立証されます。その意味では、監査は正しい財務報告を目指したいと考えている会社や経理担当者、社員一人ひとりを守るためのものとも言えるでしょう。

ひいてはクライアントのためにもなる

 

先述の通り、監査は、経営の透明性や正当性を証明するために行うものです。
そのため、時に不正や過ちを暴かれ、クライアントにとって監査は嫌われがちといえます。
しかし、クライアントのクリアな経営が証明されれば、信頼度が高まり、企業としての価値向上にも繋がります。
また、万が一不正が発覚した場合も、それを是正する手段や次の不正を阻止するための対策を練ることもできるはずです。

「監査はクライアントのためのものではない」とは言われていますが、監査を行うことで、結果的にはクライアントが正当な経営を続けることができ、株主や投資家、社員、そしてクライアントである事業会社にとってもプラスになるものなのです。

まとめ

 

今回は、監査は誰のために行うものなのかについて解説しました。
監査はクライアントのためのものではないと言われることもありますが、結果的には企業の正当性を証明し、正しい道に導くことに繋がり、クライアントのためになっていると言えます。

また、正しく監査を行うためにも、それぞれの企業に合わせた業界独自のルールや苦悩などをきちんと理解しておくことも大切。
クライアントにとってプラスになるような監査ができるよう、多様な業界の特性を学んでおきましょう!

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